KNIT a Network!ロールモデル紹介番組「学んで働いてまた学ぶ。-社会に出てからの大学院進学-」開催報告
KNIT a Network! ロールモデル紹介番組MY LIFE
「学んで働いてまた学ぶ。-社会に出てからの大学院進学-」
「KNIT a Network!ロールモデル紹介番組」は、研究に携わるいろいろな人の生活、いろいろな人の人生から、キャリアや暮らしの参考になるTIPSを提案するオンライン配信企画です。2021年度のテーマは“MY LIFE”。
生涯の中で、働く場所や環境、暮らす場所や環境は一つとは限りません。選択は人それぞれ。
毎月、ゲストのこれまでの経験や選択についてお話を伺っていきます。
今回のテーマは、「学んで働いてまた学ぶ。-社会に出てからの大学院進学-」。
北海道大学 環境健康科学研究教育センター 特任講師 アイツバマイ ゆふ先生をゲストにお迎えし、お話を伺いました。
レポート
※配信の時には詳細をお話する時間のなかった、大学院進学までの準備や、現在のポジションに至る経緯について内容を追加しています。
アイツバマイゆふ先生のご専門は、地域社会の健康を学問する公衆衛生学 。その中でも、私達が生活する室内環境や日用品に使用される化学物質に着目し、Human Biomonitoring(ヒトの曝露評価)と健康や疾病への影響を研究しています。
そんなアイツバマイ先生は、薬学部を卒業し、薬剤師として働く中で公衆衛生学に出会ったそう。そのいきさつから、お話を伺いました。
<大学院進学の決意>
薬剤師として働いていたアイツバマイ先生の主な仕事は、医師から処方された薬の準備と服薬指導 。接する方の中には、喘息やアトピーなどでQOL(Quality Of Life)が低下した患者さまもいらっしゃったそう。指導やコミュニケーションをする中で、薬だけでなく、生活習慣や環境についても科学的な根拠に基づいた情報提供ができればと考え始めたことが、公衆衛生学と出会うきっかけだったとのこと。さらに調べると、北海道大学で公衆衛生学を研究していることがわかり、当時北海道大学大学院医学研究科で公衆衛生学分野の教授を務めていらっしゃった岸玲子先生(現 北海道大学 環境健康科学研究教育センター 特別招へい教授)へアポイントメントを取り、研究室で実施中の室内環境と健康に関する疫学調査についてお話を伺いに行ったとのこと。
岸先生からお話を聞いてますます公衆衛生学、特に室内環境と健康に関する疫学調査という環境疫学という研究分野に興味をもったアイツバマイ先生の大学院進学の決意はより強いものとなり、大学院進学のための資金作りをはじめとした準備を進めていったそうです。
<大学院進学の準備>
その時のアイツバマイ先生には、大学院進学にあたって2つの選択肢がありました。仕事を続けながら大学院生にもなる方法と、仕事を辞めて大学院生になる方法です。金銭的な課題はありつつも、勉学のみに集中したほうが良いだろうとご自身を分析し、資金(学費・生活費)と入学準備を始めたとのことでした。
具体的な金額についてはさすがのDJ藤井も聞けなかったものの、準備する資金の計算方法は教えていただきました!進学先はご実家から通える範囲であったため、大学院(修士課程)2年間で必要な資金は、学費と食費・自分の日々の生活にかかる雑費。食費と雑費は1か月に必要な金額を考えて、2年間分(24か月分)を計算したとのことです。
当時アイツバマイ先生が勤務されていた会社では、道東などの札幌から遠方地域で勤務する場合は手当が充実していたり、札幌よりも家賃が安くなることから、アイツバマイ先生は自ら異動を申し出て最短で資金が貯まる工夫をされたそう。これまでの札幌での生活では、スポーツジムや習い事、友人との外食やショッピングなどに投資をしていましたが、道東での生活では公営の体育館で身体を動かすことができ、また職場と家との往復のみだったため、あっという間に目標金額を達成することができた(笑) !とも、事前インタビューで教えていただきました。
入学試験の準備は、まず受け入れ研究先を決める必要がありますが、これは大学院進学を決めることとなった岸先生の元で学ぶべく依頼をし学ぶべく依頼をして、あとは入学試験・・・!!
<大学院へ進学してから>
大学院へ進学してから、ご結婚、妊娠・出産とライフイベントを迎えたアイツバマイ先生。
妊娠のタイミングは“授かりもの”と気負わずに過ごしていたところ、修士課程2年生の夏に授かり、妊娠後期までに研究用のサンプル採取等が済み、妊娠9か月で修士の学位を取得したそうです。
大学院進学当初は、修士課程終了後に公衆衛生学を活かした就職ができるかどうか“不安がないと言ったらそうではない“とお話されていました。しかし修士課程2年間を終える時には博士課程進学という道を選び、出産直後は半年休学してから博士課程での研究生活をスタートしたアイツバマイ先生。
お子様の保育園は大学近くで見つけることができたため、一緒に通学する毎日を過ごされたそうですが、出産後のホルモンバランス変化の影響もあり、心身を元気に保つことの難しさも経験されたとのこと。このような経験を経ながらも、『環境と子どもの健康に関する北海道研究【北海道スタディ】』や室内環境とアレルギーの研究に従事し、博士課程へ進学して約3年後に博士号を取得されました。
<博士号を取得してから>
博士号を取得してからも環境疫学分野で研究を続けたいという希望があったアイツバマイ先生。希望はよく口にしていたそうです。そうしたら博士号取得する頃に、環境健康科学研究教育センターで学術研究員を募集することをアイツバマイ先生の希望を聞いていた先生が教えてくださり、ポストへ応募、採用されて現在に至るそう。
その後、環境疫学とバイオモニタリング双方のエキスパートを目指して申請した科研費の「国際共同研究強化(A)」が採択されたので、biomonitoring分野で先駆的なアントワープ大学(Toxicological Center)での研究を計画されていたそうです。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行のため1年渡航を見合わせていましたが、現在はベルギーへの渡航準備中とのこと。
配信の締めくくりに、“一度社会に出て、自分に何が必要なのかが分かって大学院に進んだ。一度社会に出るのは視野を広げるために良いのかも”とお話いただきました。
学び直しのタイミングや、方法は人それぞれ。あっという間の40分ではありましたが、アイツバマイ先生、貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました!そして視聴していただいた皆さま、ありがとうございました。