KNIT a Network!ロールモデル紹介番組「海外で迎えるライフイベント―海外で出産、子育て、家族で海外へ引越し。住むところは日本だけではないのだ!!-」開催報告
「KNIT a Network!ロールモデル紹介番組」は、研究に携わるいろいろな人の生活、いろいろな人の人生から、キャリアや暮らしの参考になるTIPSを提案するオンライン配信企画です。2021年度のテーマは“MY LIFE”。
生涯の中で、働く場所や環境、暮らす場所や環境は一つとは限りません。選択は人それぞれ。
毎月、ゲストのこれまでの経験や選択についてお話を伺っていきます。
今回のテーマは、「海外で迎えるライフイベント―海外で出産、子育て、家族で海外へ引越し。住むところは日本だけではないのだ!!-」。
家族での海外留学やライフイベントのご経験がある、北海道大学大学院農学研究院 准教授 加藤 知道先生、北海道大学大学院医学研究院 講師 小林 純子先生をゲストにお迎えし、お話を伺いました。
レポート
まずは先生方のご専門や研究内容の紹介です。
小林先生:小林先生のご専門は、動物やヒトの細胞を観察して、その構造や機能を解明していく組織学(顕微解剖学)。その中でも、タンパク質や脂質にくっついている“糖鎖”という物質と、特定の糖鎖を認識するタンパク質“レクチン”に注目し、糖鎖とレクチンの生体内での役割を明らかにする研究を進めています。
加藤先生:加藤先生のご専門は、植物生態学、微気象学。森林や草原の光合成と呼吸によるCO2排出収支の観測やシュミレーション、気候変動による植物生態や作物生産の変化予測をシュミレーションを作る研究をしています。
現在は日本で研究されている小林先生、加藤先生ですが、お2人ともそれぞれの経緯で研究留学へ行くこととなったようです。
小林先生はスコットランドのエジンバラ大学に2年間ご家族と留学されており、家族で留学することとなった経緯からお話いただきました。
留学の前は同じく研究者であるパートナーと遠距離結婚生活をしていたそうですが、パートナーが留学を打診され、「海外との遠距離結婚生活かぁ・・・」と悩んだ小林先生が教授に相談したところ、「一緒に留学行って来たら?」という提案をいただいたことが家族で研究留学するきっかけだったそう。ご夫婦で日本学術振興会の海外特別研究員に申請した結果、見事お2人とも採用され、研究留学とともに結婚後初めての同居生活が始まったとのこと。留学先は、2人の希望する研究室が近距離にある地域や大学を探した結果、エジンバラ大学だったそうです。
留学決定と同時に妊娠(第1子)が発覚した為、出産と留学先での子育てを考慮して出発を延期し、お子様の日中の授乳が無くても過ごせるようになる7か月の時に留学することとしたそう。延期した結果クリスマス休暇に入る時期の引っ越しとなったため生活の準備を整えやすいという利点もあったとのことです。
帰国後、それぞれ留学前に所属していた研究室へ戻り再度遠距離婚と単身子育て生活がスタートした小林先生。その1年半後にパートナーが北大へ異動となり、家族そろっての生活が始まりました。かねてより2人目のお子様を希望していたところ、小林先生が講師へ昇格した1年目に妊娠(第2子)、出産を経て現在に至ります。今の立場は任期付きのポジションであるため、「現在も研究を続けられる環境を模索中」とお話されていました。
加藤先生は、学位取得後海洋研究開発機構ポスドク4年目に海外特別研究員に採択され、地球科学分野で有名な英国ブリストル大学に2年間留学した後、ヨーロッパに残りたい!とポジションに挑戦してフランス気候環境科学研究所でポスドクの職を得ることとなりました。この時に第1子となるお子さまが産まれ、次のポストも欧州で探すもなかなか見つからず、日本でのポジションにも挑戦して今に至るとのことです。
ヨーロッパ生活はとても楽しく、今の研究につながる研究者ネットワークもここで培われたとお話していました。
お2人とも、海外で子育てをするという経験をされています。加藤先生のパートナーは英国で妊娠、フランスで出産を経験されたそう。
妊娠にあたり不妊治療を希望して受診したところ、日本で想像していた内容と異なりカルチャーギャップも経験したとのこと。様々な事情により、フランスへ入国してすぐに出産予定というスケジュールになってしまったものの、フランスの研究機関の直接雇用であったことや、同僚の助けにより受け入れ病院探しもスムーズに、快適な病院で出産することができたそうです。
海外での子育てについては、フランスと英国、2か国のご経験を教えていただきました。
加藤先生がフランスへ留学した時の子育て事情は、共働きを前提とした保育システム・勤務態様となっていて、0-3歳半までの間は公的保育園、公的保育ママ、私的ベビーシッターを利用し、3歳半からは全員入ることができる公的プライマリースクールがあったとのこと。加藤先生の場合は、最初の1年は家で子育てした後、保育園2つを掛け持ちし、後半は保育ママを1年半位利用したそうです。保育ママは同時に3人まで保育できることとなっているそうですが、加藤先生のお子様はいろんなバックグランドを持つ他2人の同世代のお子様とを一緒に過ごしたそうで、良い経験になったとお話されていました。
英国での保育園探しについて小林先生は、①住む場所を決めて②家と職場の近くで行けそうな保育園をさがす③全てにメールで問い合わせるという手順で探したとのこと。近隣の保育園全てに問い合わせたものの全く返信がなく、電話でも問い合わせてみても見つからず、そうこうしているうちにメールで問い合わせしていた1件から返信があり、着任直前にようやく決まったそうです。
このような様々な経験をされてきた先生たち。
海外での生活において、小林先生から、“まずは仕事、住む所、家族がいれば保育園、3つがあれば先進国なら大丈夫。” 加藤先生から、“海外留学の際は、雇用主によって使える保険が異なるため、自分がどの保険を利用出来るのか(日本の健康保険か、現地の健康保険制度に加入するのかなど)予め調べておくと良い”とアドバイスをいただきました。
こぼれ話として、現地で銀行口座を開設する際、現地で就労していることや身分を証明出来る書類がなくて苦労したこともあったそうです。
最後に、若手の学生に向けたメッセージをいただきました。
小林先生:妊娠のタイミングは予測できないものなので、そうなった時の状況で最善の策をとればいいから、前向きにどこでも大丈夫だと思って進んでほしいです。小さいお子さんを連れての留学は大変でしたが、休暇のたびに旅行したり、楽しい思い出しかありません。
加藤先生:海外に行かない手はないのではないか。研究者にとって海外に行くのは義務じゃないかと思います。
先のことを色々考えると一歩踏みとどまりそうになりますが、背中を押してくれるお言葉に、DJ藤井も元気と勇気をもらっていました。
加藤先生、小林先生、貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました!そして視聴していただいた皆さま、ありがとうございました。
★小林先生が「実験医学online」に寄稿した留学体験記に沢山のエピソードが紹介されています。こちらもぜひご覧ください。
子連れネコ連れエジンバラ留学体験記Part1
次回のKNIT a Network!ロールモデル紹介番組は、12月2日(木)の開催を予定しております。
テーマは「学んで働いてまた学ぶ。-社会に出てからの大学院進学―」です。
こちらもお楽しみに!